変形性膝関節症はなぜ女性に多いのか?
膝の痛みや変形性膝関節症は、男性よりも女性に多くみられる疾患です。
その背景には、いくつかの要因が関係しています。
原因を理解しておくことで、痛みの軽減や進行予防につながる工夫も可能になります。
ぜひ押さえておきたいポイントを、順番に解説していきます。
① 変形性膝関節症と女性ホルモンの関係
女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、膝関節の健康に深く関わっています。
このエストロゲンが減少すると、変形性膝関節症のリスクは大きく高まります。
エストロゲンは40代頃から徐々に低下し始め、50代では明確に減少します。
ちょうどこの時期に変形性膝関節症を発症しやすくなるため、ホルモン変化との関連性は非常に高いと考えられています。
② エストロゲンが骨・軟骨・滑膜に及ぼす影響
エストロゲンには、関節を守るためのさまざまな働きがあります。
• 軟骨細胞を保護し、関節内の炎症を抑える作用
• 閉経後にエストロゲンが減少すると、軟骨の分解が進行しやすくなる
• 骨を吸収する破骨細胞の働きを抑制しており、低下すると骨密度が減少し、膝への負担が増加
• 血管拡張作用があるため、減少すると膝周囲の血流が低下し、痛みを感じやすくなる
• 神経レベルでの疼痛抑制作用があり、低下によって痛覚過敏が起こりやすくなる
• 内臓脂肪の蓄積を促進しやすくなり、体重増加による膝関節への負荷が増える
これらが複合的に影響し、膝関節のトラブルが起こりやすくなります。
③ 閉経後に増える変形性膝関節症の発症率
疫学的研究により、閉経後の女性ではエストロゲンの減少とともに、変形性膝関節症の発症リスクが急激に上昇することが確認されています。
また、エストロゲン補充療法(HRT)を受けている女性では、
膝OA(変形性膝関節症)の進行が緩やかになるという報告もあります。
(Felson et al., 2003
“Estrogen and osteoarthritis” Arthritis & Rheumatism)
読んでいただきありがとうございました。膝の痛みは「年のせい」と片付けられがちですが、体の変化を知ることで対策は十分可能です。ご自身の膝と向き合うきっかけになれば幸いです。








